僕らが本屋の未来を変えるまで

リトルスタッフ開発や日々の取り組みについての記録

AIのレコメンドは本屋に勝てない

AmazonなどAIのレコメンド(本のおすすめ)は本屋に勝てないのではないか、と最近考えるようになりました。
今のレコメンドではなく空想の未来で、「まるで選書のソムリエが私のためだけに選んでくれたみたい」なレコメンドが実現されたとして、それでも僕は本屋には勝てないのではと感じたのです。

ただこれは「本屋の選書がAIに勝つ」「選書においては人間の方が優れている」ということではなく、「本屋にて自分で選んで買う」という行為に勝てないということです。
選書そのものではなく(選書も大事)、その時の自分の感覚で選ぶのがポイントです。

なお、ここから先は小説やエッセイなど娯楽用の本に限定した話です。技術書や実用書、学問書などは除外しています。

「AIは本屋に勝てない」と僕が思った体験を4つお話します。それぞれ短いのでご安心ください。

1. 昔は好きだったけど...

僕は20歳ぐらいから小説を読み始めたのですが、その時に何名かの作家さんにベタ惚れしました。
その時に刊行されていた本は全部読んだと思います。
ある作品のファンブックみたいなのも買ったし、インタビューが出ていれば読んだりしました。

時を経て最近では、彼らの作品を読むことはほとんどありません。
新刊が出ていると思ってもスルーしています。

2. 昔は読めなかったけど...

数年前に、初めて太宰治を読みました。
夏目漱石の「こころ」も学生時代(授業で読んだ)ぶりに、読み返しました。

それまでは、いわゆる古典作品には手を出しませんでした。僕が好きな感じではないと思っていたからです。
でも当時は古典作品も読んでみたいと思っていた頃で、手を出しやすそうな太宰治などを読みました。

3. 昔だったら好きだろうな...

最近読んだ小説が、いわゆるラノベ調でした。
読みやすかったし面白い設定だったり好みには近かったんですが、ラノベっぽさから次巻は読まないと思います。
でも20歳ぐらいの僕だったら楽しめたと思う。

昔はラノベが好きでした。でも今の僕はラノベを楽しめません。
ラノベは誤解されやすいので補足しておきますが、優劣とかじゃなくて単純にジャンルとしてラノベという表現を使っています。
「恋愛小説が合わない」と同じようなニュアンスだと思ってください。

4. 今はとにかくミステリー

最近は何を読みたいか考えた結果、今の僕が求めているのはミステリー小説でした。
更に細かく限定すると人が死んでハラハラする系のミステリー。
人が死なない日常系ミステリとかじゃなく、一般犯罪の謎を探偵役が日々の中で調べていくとかじゃなく、隔離された山荘で1人ずつ人が死んでいくようなミステリです。

人が死なない日常系ミステリを好んだ時期もありましたが、今は断然死んで欲しい。心温まるような小説は求めていない。

4つの体験談より

どの話も結局、「今の僕が何を求めているか」がポイントになっています。
AIレコメンドに限らず一般的な選書サービスというのは、その人の過去をベースにしています。

どういう本を読んできて、どういう作家が好きで、どういうジャンルが好きかというデータをアレコレ詰めて、そこからオススメします。

でも面白い小説かどうかは今の僕の状態に依存するわけで、今の僕を知っているのは今の僕しかいません。
めちゃくちゃ好きだった作家の新作を提案されても合わないし、その作家に似ている別の作家を提案されても、そういう作風に飽きていたら合いません。

読者(僕)の状態は常に変化しているし、何より作家(作品)の状態も変化しています。多く作品を出している作家なら尚更です。
僕らが日々の中で価値観や好みが変わるように、彼らだって価値観や好みが変わり、それは作品に反映されているはずです。

この変化の中でバチッと好みが噛み合わないと、「面白い本に出会う」ことは難しいと思うんです。

本屋が強い理由

本屋の強みは「自分で選んで買う」体験に特化しているところです。
もちろん本屋自体も選書はしています。どの本を扱うか、どう並べるか。そこに個性やセンスが出ます。

しかし本屋が提供するのはそこまでです。与えられた選択肢からどの本を選ぶかは読者が決めます。
そして数ある選択肢から選ぶ上で、本屋という物理的な体験が生きてきます。
店内を巡り、視界が本で埋まり、手に取って質感を楽しみ、パラパラ見たり、肉体をフルに使った先に「今これを読みたい」という出会いがあります。

繰り返しますが「選書」という点でAIが人間(本屋)に勝てないわけではなく、良い本は自分で選ばないと出会えず、自分で選ぶことに特化している本屋という物理的な空間にAIは勝てない、です。

恐らくこの考えの先には、「じゃあAIレコメンドで選択肢を絞る + VRによる仮想空間の本屋だとどうなる?空想の未来で立ち読みとかも出来ちゃうレベルに進化したら。リアル店舗いらない?」だと思います。
さて、どうでしょう。


いつもの宣伝:本屋の個性にお金を払う

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