僕らが本屋の未来を変えるまで

リトルスタッフ開発や日々の取り組みについての記録

街から本屋を消さないために僕らができること

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僕らが本屋を好きな理由

僕らはどうして本屋が好きなのでしょうか。
人それぞれだとは思いますが、僕含めよく言われる意見は「思わぬ本との出会いがあるから」です。

Amazonなどネットでは出会えない。実際の店舗に行って、見てまわることで出会える楽しさがある。
本屋は本を買うだけの場所ではなく、本と出会うための空間です。決まった本を買うだけなら通販で充分です。

お店には申し訳ないですが本を買わなくても、行くだけで本屋は楽しめます。本と出会えることが本屋の価値だからです。

ではその出会いとは、ジャンルや出版社とかでグルーピングして適当に本を並べておけばいいのでしょうか。
在庫は多ければ多いほどいいのでしょうか。品揃えが少ない小さい本屋さんには価値がないのでしょうか。

そんな単純なことじゃないのは、本屋好きなら伝わると思います。
在庫の多さは強みですが制限もまた武器になります。そこに優劣はありません。お店ごとの特徴という差が出るだけです。あとはその特徴が自分の好みと合うかどうかです。

また大小関わらずどんな本屋でも必ず"選書"はしています。全ての本を置くことは物理的に不可能だからです。

どんな本を仕入れるか、または仕入れないか。仕入れた本をどう棚に並べるか。
これは書店員のスキルであり、本屋の個性です。

僕らが好きなのはただの本屋ではありません。本屋だったら何でもいいわけではありません。恋愛と同じです。どこでもいいわけじゃなくて「その本屋」が好きなのです。
僕らは本屋の個性に惚れています。

本屋の現状

この記事を読んでいる人なら恐らく聞き飽きたでしょうが、今の時代、本屋は経営を続けるのが困難と言われています。
要因は「本が売れない」「定価が安い」「売れても粗利が低い」「売れてもリピート間隔が長い」の4つだと僕は考えています。

本が売れていたらしい(僕は知らない)昔と比べてですが、本は売れないと言われています。

売れたとしても粗利(本屋に入る利益)は、契約によりますが大体23%とかなので1000円の本でも230円です。
1万円分の本を買っても2300円しかお店に入りません。
1冊500円程度の文庫本なら115円程度です。

定価が高ければまだしも、本は基本的にとても安いです。

そしてほとんどの人にとって読書は時間がかかるものなので、「次に来店して本を買う」までの間隔は長いです。
読むのが早いガチガチの読書家や、積読が気にならない本好きは貴重な少数派です。

僕の友達には1冊の小説を読むのに1ヶ月ぐらいかける人がいます。読むのが遅いのと、日々のスキマ時間で読むためです。

そこで今の本屋さんの多くは、文房具やグッズなど他商材を売ったりイベントを開いたりカフェなどを併設したりします。
間接的には本に関係しているとはいえ、本以外の商品でマネタイズするようになりました。

もちろん本屋さんはそれぞれの理念を持って、これらの施策を取っています。その選択に誇りを持っていることでしょう。

ですがこの現状の先にあるのは2パターンで、「お店のコアである選書や本棚がおろそかになる」か「書店員さんが疲弊してパンクする」のどちらかです。

読者の現状

僕たち読者(本屋のお客さん)は本屋で本を買うことが少なくなっています。だから本屋で本が売れないと言われているわけです。

理由はさまざまです。ネット通販で済ませている、スマホや他のエンタメに移行して本を読まなくなった、日々の生活が忙しくて本を読んでいる余裕がない、そして身近に本屋がない。

もちろん僕を含め本屋が好きで本屋を応援したい人は本屋で買います。とはいえ、いつでもどこへでもとはいきません。
学校や仕事や家事など生活が忙しい場合。好きな本屋だけど遠方の場合。普段は行けないけど思い出深い本屋がある場合。
そのお店に長く残って欲しいとはいえ、わざわざ行くのは大変です。

そして本屋の現状で書いたとおり構造上、僕らの購入でお店に渡る利益は微々たるものです。

この現状の先にあるのは、「好きな本屋が潰れて」しかも「好きな本屋が新しく出てこなくなる」ことです。

本屋の個性にお金を払う

選書はスキルです。本棚は作品です。そしてもちろんお店も作品です。

僕は本屋さんというのはただ本を売りさばいているわけではなく、本を使ってお店という作品を作っているのだと考えています。
商品ではなく作品です。ビジネスよりもアートです。

お客さんである僕らが受け取るのは本そのものではなく、お店の空気感、本との出会い、自分で選んだ特別感などです。これらの演出を全部ひっくるめて本屋体験と僕は呼んでいます。

こういう表現には賛否あるかもしれませんが、本屋は体験を売っています。

個性というと「そんな特殊なタレント性はない」と尻込みする本屋さんもいるのですが、読者である僕からすれば本屋をやっている時点で個性は出ています。
本屋の個性というのは書店員の人間性だけじゃなく選書やお店も含めます。というか、個人的にはそっちの方が強いです。

そんな本屋の個性ですが、今はそこにお金を払うことはありません。
個性の結果として本屋は本を売るしかなく、読者は本を買うことでしか応援できません。

しかし先に書いたように、本の売買では限界が見えています。

だったら本を買う以外で支援できる手段があればいいのでは?
その思いで作られ、今も運営を続けているのがリトルスタッフです。

良いと思った本屋に、本を買う以外で応援できるシステムを作った - 僕らが本屋の未来を変えるまで

リトルスタッフでは現在、課金額の100%をその本屋さんに還元しています。
毎月300円の支援額でも、毎月1000円の本を1冊買うのと同じ支援になります。
毎月300円でも100人の支援者がいれば3万円です。その効果は100冊以上の売上と同じです。

本屋の未来を作る仕組み

あまり「これからの」とか「未来の」という言葉をつけたくはないんですが、リトルスタッフに関しては本当に未来を作るために活動しています。

リトルスタッフによる支援は単純に「本屋経営が厳しいので投げ銭してください」とか「投げ銭とか最近ブームだし」というレベルのものではありません。
経営が順風満帆になれば支援しなくてよくなるような、一時的な取り組みではないんです。

これは「選書含めて本屋そのものを作品とみなし、そこにお金が流れる仕組み」作りです。

繰り返しますが選書はスキルであり個性です。その選書が置かれる空間や接客スタイルなどもお店という作品の一部です。
そのスキルや作品にお金を払うことが当たり前、という文化を作るための挑戦がリトルスタッフです。

短期的にはたしかに「そのお店の経営を助ける」だけですが、これがあらゆる店舗で実現されることで本屋の個性にお金を払うことが当たり前になります。

この文化が実現するとどうなるか。

本屋はもっともっと「自分が売りたい本」に注力できます。「売れるから」という理由で仕入れることが減り、「好きで推したいから」とか「うちのカラーに合うから」などの理由で選ぶことが当然になります。
選書にこだわればこだわるほどリトルスタッフによる支援が増えるからです。
逆にいえば当たり障りない、特色のない本屋は少なくともリトルスタッフ上では生き残れません。

読者はまず、単純に自分の好きな本屋が長く残るようになります。
そして次に、身近に面白い本屋が増える可能性が高くなります。リトルスタッフにより経営が今よりしやすくなるからです。
つまり本屋体験をもっと楽しめるようになります。

読者としては好きな本屋を応援するだけで構いません。それをしてくれる人が増えるだけで文化は出来上がっていきます。

本屋は僕らをもっと楽しませてくれるはずで、その本気を見せてもらうために「本屋の個性にお金を払う」仕組みを作りたいんです。

月の支援額が1万円を突破

リトルスタッフは「今の参加書店さんで結果を出すこと」に注力しています。
新規の参加登録も喜んで受け付けてはいますが、大々的に募集はしていません。

参加書店数を増やす方がサービスとしての売上は増えるので僕は助かりますが、そんな薄利多売のようなやり方では本屋さんに貢献できません。何より目指している仕組み作りに近づけません。

協力してくれている感謝の意味も込めて、まずは参加書店さんにしっかりと目を向けるフェーズです。

そんな中で、支援額が月1万円を超える本屋さんが登場しました。
月1万円ということは、1000円の本で言えば月40冊以上を購入したのと同じ利益です。

目指した形へ少しずつ近づいてきました。
リトルスタッフには改善点がまだまだあり、今後もっと良いサービスへと成長します。

これまでのご協力、ご支援ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。


参加書店の中に好きな本屋があったら応援して頂けると嬉しいです。最初の31日間は無料です。
https://www.littlestaff.jp

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