今の本屋の4つの限界
本屋専用のクラウドファンディング、リトルスタッフをリリースしました。
書店巡り等でリトルスタッフを説明するために考えを整理しています。
資料に入れるかどうかは分かりませんが、今の本屋のビジネスモデルには4つの限界があります。
前提
「今の本屋のビジネスモデル」 = 「来店したお客さんに本を売る」モデルとします。
限界1: 粗利の限界
買切だったり出版社と直取引だったり、取次によって契約が違ったりで一概には言えませんが、本の粗利は23%前後です。
1,000円の本なら230円、500円の本なら115円がお店の利益になります。
書店員の人件費で1人23万払うなら毎月1,000冊売る必要があります。
1,000冊ということは1日32冊です。
32冊ということは8時間営業の場合、1時間で4冊です。
ちなみに人件費だけで言いましたが、もちろん実際には家賃等の固定費や他の変動費もかかりますね。
限界2: 立地の限界
来店したお客さんに本を売るだけでは、当たり前ですが立地に思いっきり依存します。
その本屋の周辺に人がいなければ売上に繋がりません。
人がいて尚且つ本を読む層となると、都内以外では特に厳しくなります。
さらに近くに本屋が複数あればパイの取り合いです。
本屋さん同士は仲が良い業界ですが、ビジネスとして売上を分け合っている状況は変わりません。
限界3: リピーターの限界
何とか立地の問題をクリアしてお客さんが集まったとします。
自分のお店を気に入ってくれる人も出てきたとして、そのファンが次にお店にやってくるのはいつでしょうか。
良いケースで「本を読み終えたらまた来る」として、何日後に読み終えるでしょうか。
読書家は往々にして速読家が多いので、そのコミュニティにいると麻痺しがちですが、一般的には1日で読める人は少ないはずです。
例えば「文庫本なら3時間で読める」としましょう。これでも一般的にはかなり早い方です。
では3時間なら1日で読めるかというと、そうとも限りません。1日のうち3時間まるまる読書に使うとは限らないからです。
一気に読めば3時間でも、空き時間に少しずつ読むので結果的に数日かかるということは普通にあります。
仮に3日で1冊読むお客さんがいるとします。
その人が毎回1,500円の本を買ったとしても、お店に渡る利益は3,450円/月です。
(1,500円 x 0.23(粗利) x 10(1ヶ月で購入した冊数))
限界4: 在庫の限界
ネット書店との大きな違いであり、勝負すべきではない部分。在庫です。
売場面積が限られている以上、どうしても本屋が置ける本は限られます。
1日200冊も新刊が出ている現状、個人書店に限らず大型書店でさえ一部の本しか置けません。
「欲しい本が書店にない」という反応を良く見ますが、一部の超大型書店以外ではもう、「欲しい本を買いに」本屋へ行くモデルは限界があります。
本屋自体がそのモデルを辞めていくのと同時に、お客さんの認識も変えていく必要があります。
現状の対策
たらたら書いたこれまでの事はもう何年も前から分かっていることで、だから最近の本屋さんはあれこれ試しています。
他商材を売ったりカフェ併設は「粗利の限界」や「リピーターの限界」への対策(本を買う以外で来店理由を作る)。
トークイベントも同様です。(多くのトークイベントは出版社の販促という側面も大きいですが)
ギャラリーや写真展やタイアップやら、そういったものも「粗利やリピーターへの限界」の対策です。
「まずはお店に来てもらう」ことを施策としてやっている本屋さんが多いです。
ECで本を販売している本屋さんもあり、これは「立地の限界」や「在庫の限界」への対策です。
余談ですけど、「トークイベント」って刊行記念がほとんどですよね。
出版して少し経った後に読んだ人を対象に「感想会」目的で作家さんとかがトークイベントを開くのをほとんど見たことがない。
僕が観察している範囲のイベントがたまたま偏っているだけかな。
感想会を開いた方が読者の満足度も高まるし、作家や出版社がファンを繋ぎ止める大事なアフターフォローではないでしょうか。
感想会で参加者の満足度を高めたら、その人達が拡散してくれて販促の第二、第三の波を生む効果を見込めるはず。
これからの対策
リトルスタッフはこれら全てを解決するための基盤です。
もちろんリトルスタッフだけで解決するような魔法の粉ではなく、結局は本屋さん個別のアイデアと行動が必要です。
でも、何かチャレンジしようとする本屋さんを助けます。
- 粗利の限界
- リトルスタッフは支援額の90%以上が本屋さんに還元されます
- 500円の月額支援があったら450円が本屋さんの利益になる
- もし「本を売る」で同じ利益をあげようとしたら、約4冊買ってもらう必要がある
- 立地の限界
- インターネット上での売買なので立地に左右されません
- 極端な話、離島の本屋でも経営が可能だと思っているし、そういう実例を作りたい
- リピーターの限界
- 本を売るわけではなく(売っても問題ない)、体験や特典、何でも売れる
- 何より定額制のプランを作ることが出来れば、少なくとも1ヶ月内での「リピーター」という概念が不要になる
- 在庫の限界
- 本を売るわけではないので在庫という概念がない
- リトルスタッフで売る商品(リターン)にもよるけど
- 例えば「トークイベントのレポートを月額500円の有料会員に送る」というプランなら、在庫はない
- 本を売るわけではないので在庫という概念がない
「お客さんに来てもらう施策」じゃなくて、「本屋がお客さんのもとに出向く施策」があってもいいと思うんですよね。
本のイベントとかはそれに近いですが、お祭りごとじゃなくてもっと日常的にあってもいいのでは。
タイムバンクのように「xx本屋の店主を2時間貸します」みたいなケースが出てきても良い。それをリトルスタッフ内のプランとして売る。
もちろん出来るかどうかと、それを本屋がやりたいかどうかは別ですが。
これだけだと結局、「具体的な例」がないから、やっぱりイメージは沸かないだろうな。というあたりで今日の記事は終了。
基本的に短い記事にしたいんだけど、ついつい長くなってしまう。長くなるのは論理や文章が未熟な証拠。
そんなリトルスタッフ、説明会という名の無料飲み会を開きます!
赤坂近辺、もしくはお時間合う人はぜひ一緒に本屋について語りましょう。
本屋かリトルスタッフに興味があれば、書店員じゃなくても大丈夫です。
【参加無料】12/1(金) リトルスタッフを肴に本屋について語る会 #1
日記
次は何から作るか考えていたが、「いいから作り始めちゃえよ」という内なる勢いも感じている。
作るかどうかを迷うならともかく、作ることは決まっていてその順番で迷うくらいならさっさと作っちゃえばいいのでは。
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こっちも、ご興味ある方をお待ちしています。
トークイベントで質疑応答に使うための匿名チャットサービスを作りました - 僕らが本屋の未来を変えるまで
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