本屋投げ銭サービスの顧客と市場予測
本屋投げ銭サービスLittleStaffが対象とするターゲット層についての設計です。
言い換えると、このサービスは「誰の」「どんな課題」を解決するのか。
誰の
そのままですが、「本屋に投げ銭をしたい人」が対象です。
この言葉だけで「ああ、分かる」と感じる人が初期のターゲット層と言えます。
どんな課題
前回の記事でも書きましたが、本屋には本を買うことでしか売上を落とすことができません。
(カフェやイベントなど本以外の商材は考慮外とする)
本屋が好きな人、そうでなくても訪れる人の多くは本屋の空間や体験に価値を見出しているにも関わらず、その部分に対して対価を払うことが出来ません。
LittleStaffは、「本屋に潰れてほしくないから貢献したいが手段がない人」向けです。
ここで「手段がない」というのは、「その店で本を買ってあげたいけど電子書籍で欲しいから」というような購入者の都合も含みます。
市場規模
精度の高い予測を立てるのは無理だと思いますが、簡単に推測してみます。
日本著者販促センターによると、2009年時点で読書人口は5000万弱。
「2013年でも変化はないと考える」とあるが2017年時点ではどうなのだろう。そもそもこの数字はどうやって調査したのか。
今では更に減っているとは思いますが、ここでは5000万人で考えを進めます。
まずサービスを使う前提として「ネットに慣れている」必要があります。
なので60歳以上の人(800万弱)をターゲットから外します。
(60歳以上でもネットに精通している人はいますが、ここではあくまで試算としてざっくり削ります)
残りの読書人口のうち何割が本屋へ行くでしょうか。本屋に行かない人も増えてきたと見聞きしますので、だいぶ低く見積もって5割とします。
さらにその中で「本屋が好き」という人はどの程度でしょうか。これも低く見て1割とします。
属性 | 人口 |
---|---|
本を読む | 5000万人 |
60歳未満 | 4200万人 |
本屋へ行く | 2100万人 |
本屋が好き | 210万人 |
次に1人あたりの年間の投げ銭金額(課金額)を設定します。
月300円として年間で3600円です。
属性 | 人口 | 課金額(年3600円) |
---|---|---|
本を読む | 5000万人 | 1800億円 |
60歳未満 | 4200万人 | 1512億円 |
本屋へ行く | 2100万人 | 756億円 |
本屋が好き | 210万人 | 75億円 |
この概算だと以下のようになります。
- 初期ターゲット(本屋が好き)においては75億円
- メインターゲット(本屋へ行く)においては756億円
- 潜在ターゲット(本を読む)においては1512億円
2016年の出版市場は1兆4,709億円ですので、メインターゲットの756億円でも出版市場全体の5%程度となります。
出版市場の底上げと言うには頼りないですが、このサービスで大事なのは「本屋の経営にどれだけ助かるか」です。
なので、1店舗あたりの平均を出してみます。
同じく日本著者販促センターによると2017時点で本屋は12,526店舗あります。
よって、1店舗あたりは次のようになります。
市場 | 1店舗あたり年間 | 1店舗あたり月間 |
---|---|---|
75億円 | 60万円 | 6万円 |
756億円 | 603万円 | 50万円 |
1512億円 | 1207万円 | 100万円 |
厳密には上記からサービスと決済代行の手数料が引かれます。合わせて10%ぐらいを考えているので、概算上は無視できる金額とします。
結論として、大型書店においては"足し"程度だと思いますが、中小書店においては本自体の(売上ではなく)利益と同等かそれ以上ではないでしょうか。
これはあくまで概算ですし結構雑です。全ての店舗が参加するわけではないでしょうし、均等に配分されるわけでもありません。
ただここで知りたかったのは「やる価値があるかどうか」であり、このような乱暴な計算ですら期待値に満たないようでは不安が残ります。
その意味では、この数字は僕が描いている目標売上に近く、チャレンジする価値はありそうです。
(試算する前から、1店舗あたり月50万ぐらいは稼げる仕組みにしたいと思っていた)
日記
投げ銭というか課金をいかにユーザーにしてもらうか、についてずっと考えている。答えはまだない。
投げ銭は「お金を払う」こと自体にハードルがあるのではなく、そこに至るまでの導線、行動デザインにハードルがあるのだと思っている。
SHOWROOMやクラウドファンディング、noteみたいなサポート系の場合はコンテンツと課金のタッチポイントが近い。
(例えば投稿を読んで共感/感動したら、同じ画面上ですぐに課金できる)
しかし本屋の主なコンテンツは「リアルの体験」であり、そこからサービスを使うまでに「間」が空いてしまう。その場でスマホを取り出して課金というのは考えにくい。少なくとも僕はやらない。開発者の僕がやらない物を作るわけにはいかない。